
味わい深い馬頭観音様を紹介するコーナー第2回は、千葉県旭市松ケ谷王子井戸坂上にある馬頭観音様。千葉県東部に特徴的な、馬に乗った馬頭観音のご紹介です。

王子井戸坂を登った辺りの干潟八万石を望む墓地の横、ガードレールで守られるように三体の馬頭観音がひっそりといらっしゃいました。馬頭観音の由来等に関しては拙ブログのコチラで書いていますので、少し詳しく知りたい方はご一読を。
三体とも馬に跨ったお姿です。馬頭観音自体は全国に見られますが、この馬に乗ったタイプは千葉県、特に西上総と東下総に多いらしく実際私も千葉県でしか見たことありません。
馬頭観音だから馬に乗ってるの当たり前だろうとか、文殊菩薩はよく獅子に乗っとるやんけとか思われるかもしれませんが、とにかく馬に跨った馬頭観音は長野県の一部を除き、ほぼ千葉にしかいないのです。なぜなんでしょうか??ともあれ、石仏の地域差という訳で三体とも興味深いお姿ですが、今回クローズアップするのは一番左の馬頭観音様。

馬頭観音が三面であるのは特に珍しい事ではないのですが、全て正面を向いてるのはあまり見たことが有りません。首を横に高速でカクカクしているようにも見え、ユーモラスな印象を与えます。通常馬頭観音は憤怒の表情ですが、どのお顔も柔和な表情で、右の一面などは微笑んでいるような気さえします。宝冠も被らず髪型もシンプルで、額の馬も有りません。
辛うじて馬頭印を結んでいるのは分かるけど、この写真見ただけだと馬頭観音だと分かる人は中々の通ですね。昭和3年造立らしいので、当時としては新しい感覚で作られたのかもしれません。

馬頭観音が跨るお馬さんです。ズドンとした、牛と言われても気づかないようなどっしりした馬ですが、馬頭観音が跨っている馬はだいたいこんな感じ。サラブレッドが日本に入ってきたのは明治時代という事ですし、昭和ヒトケタのこの頃はまだ在来種の馬が農耕馬として使われていたのかもしれませんね。
ともあれ当時はまだ、干拓事業や農作業に多くの馬が使われていたと思います。干潟八万石を見下ろすこの場所に、馬の供養も意味する観音様を建立したと。泣ける話じゃありませんか。3か所から寄せ集められただけかもしれないけど、いずれにしてもいい話ダナー。

表情も素晴らしく、ほっこりする馬乗り馬頭観音様でした。ただひとつ残念なのは、後ろに見えるはずの干潟八万石のパノラマが竹やぶでほとんど見えなくなってしまっている事。どなたか、もう少し何とかしてあげて!
こんな寂しい写真で終わるのもアレなので、最後にムービーをどうぞ!以上、千葉県旭市松ケ谷王子井戸坂上の『馬乗り馬頭観音』でした。
所在地 千葉県旭市松ケ谷
駐車場 隣りの墓地に駐車スペース有り