熊本県球磨郡球磨村『柴立姫神社の柴立姫大神』

まぼろしブログ『火の国熊本編』のスタートを飾るのは、熊本県球磨郡球磨村の『柴立姫(しばたてひめ)神社の柴立姫大神』であります。トーテムポール状の巨大珍宝と、神社にまつわる謎が謎を呼ぶ悲しき物語のレポートです。

鹿児島長期出張の最中に『出張中の出張』が発生し、熊本県に車で行く機会に恵まれました。まず目指したのは、鹿児島と熊本の県境に位置する球磨郡球磨村。JR肥薩線一勝地駅(令和2年度7月豪雨災害の影響で運休中)から球磨川に沿った旧道を2キロほど進むと、小さな朱塗りの祠が見えてきました。熊本編の第一目的地、『柴立姫神社』の社殿です。

まず否応なしに目に入ってくるのは、高さ10メートル以上あろうかと思われるご立派な木製男根オブジェクト。『柴立姫大神』(奉納 球磨村商工会 平成18年3月)と彫られており、根本の丸い巨石2つの位置関係はどう考えてもTWO BALLS。この安定感なら未曽有の豪雨でも安心かな。資料によると祠の前に赤い鳥居や珍宝手水が有るはずですが、こちらは豪雨の影響なのか見当たりませんでした。

草木でちょっと見づらいですが、柴立姫神社の由来書き看板。何気なしに読んでみると、怖いお話がサラッと書かれていました。

昔、武士(公卿とも)の父娘の長旅の途中、父は、旅につかれ人の道にはずれた娘を斬り、道ばたに埋め柴を立てて立ち去った。村人は娘をあわれみ、み堂を建てて祀った。これより婦人病や腰から下の病気が治った。伝え聞いて遠くからお参りする人も多くなった  例祭日 旧暦 三月四日

一見しただけでは意味が分からないというか、オブラートに包んだような表現でモヤモヤしますが、調べましたところ要するにこれ『近親相姦』のお話だったんですね。

旅に疲れ、民家で宿を取った親子。何故か親子は男女の関係になり、翌日、娘が再度迫ったため激高した(?)父は娘を斬り殺してしまった、と。旅に疲れて一線超えちゃう状況も分からんけど、一度は受け入れている上に、娘をたしなめるでもなく斬り殺しちゃう親父の心境も分かりません。

色々と謎が多すぎですが、私は、行き遭い神や狐憑きの仕業で錯乱状態にあったのでは?と推測します。いずれにせよ陽気な奉納物たちと対照的な、悲しい由来ですね。

右側の祠内部に小さな賽銭箱と祭壇が有り、男根を模した奉納物と、尼僧型の石仏が祀られていました。

大小の奉納物たち。資料に比べるとずいぶん数が減っているようですが、お酒のカップなんかは新しいし堂内は綺麗に掃除されています。

中央、小さな石祠に入った柴立姫様。柔和な表情が印象的です。『柴立姫』という名前を初めて見た時は知らない女の神様の名前かと思ったのですが、お気づきの通り、父親が芝を立てて立ち去ったという由来から来ています。

ここからは私の勝手な想像ですが、正気に戻った父親は目印のために芝を立て、後できちんと弔うつもりだったんじゃないかな。何らかの理由で再びこの地を踏むことはなかったけども。

でなければ遺体をただ埋めて痕跡を残さず立ち去ればよいし。実際現場に出くわした村人に諭されての行動かもしれないけど、とにかくこの悲しい珍事は前日からの行動も含め、しっかりと集落に伝わっている。親子にその時何が起こったのか、父は娘の死に何を思ったのか。今となっては知る由も無いけど、現在の性信仰の下敷きになるような何らかの妖しげな、『性の逸話』が確かにここに在ったはず。悲しくも、実に興味深い話だと思います。

神社の周辺では、大雨で崩落した崖や線路などがいくつも見られました。令和2年度7月豪雨災害の甚大な被害はまだ記憶に新しいところ。いち早い復旧を心より願っております。神社までの道のりを、可愛らしい熊本弁で丁寧に教えてくれた地元のおばちゃん有難うございました。

柴立姫神社

住所  熊本県球磨郡球磨村一勝地丁丁259

アクセス JR肥薩線一勝地駅より徒歩20分ほど

駐車場 神社脇に駐車余地あり

 

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